JOCA連載コラム vol.16

エネルギー問題と社会システム

JOCA理事 竹内 宏規

昨年12月に京都大学大学院・植田和弘教授らが纏められた「国民のためのエネルギー原論」(日経出版社)が出版されました。文字通り国民のための現実的な視点と将来世代への責任を踏まえた、エネルギー問題の解決に向けた提案書となっています。話題となっている立命館大学・大島堅一教授の「原発のコスト」に関する知見や、ドイツのエネルギー戦略など最新の研究データが網羅されており、まだ読んでおられない方には是非一読をお勧めしたい一冊です。

国民の生命と財産を守ることが国の最も重要な仕事であることは、古今東西変わらぬ社会原理でありますが、3.11とその後の過酷な原発事故を経験したこの日本においては、それらの前後の過程が明らかになるにしたがって、国に守られるよりもむしろ国のミスリードによって国民の生命と財産が将来に渡って毀損されかねないという、かつて感じる事のなかった、大きな不安を国民の頭上にもたらしつつあります。

ドイツの社会学者ウルリッヒ・ベックは、不安が増大しつつある日本の現状を「リスク化する日本社会」(岩波書店)と表現をしています。生活感に基づく解釈では「不安だらけになりつつある日本社会」と言えるかも知れません。「安全神話」や「安心安全」が謳われた日本社会の「安全」とは何であったのか再度問い直すとともに、その時々の政治状況・経済効率・関係利害に大きく左右されない、持続可能な社会安全・エネルギー戦略・社会システムを構築する必要があると考えます。

アメリカの環境経済学者ハーマン・デイリーは、持続可能性の条件として次の三原則を挙げています。①「再生可能な資源」の持続可能な利用速度はその供給源の再生速度を超えてはならない。②「再生不可能な資源」の持続可能な利用速度は再生可能な資源への転換速度を超えてはならない。③「汚染物質」の持続可能な排出速度は環境がその汚染物質を循環、吸収、無害化出来る速度を超えてはならない。

汚染環境を後世に押し付けない世代間倫理に基づき、「持続可能なエネルギーシステム」と「持続可能な地域再生」を関連付け同時に実現していくことは、全ての世代の国民が「不安」よりも「希望」を見出すことの出来る「持続可能な安全社会」の構築への第一歩になるのではないかと思います。オーガニックな社会環境に関わる者の一人として、その実現に向けて些少なりとも努力をしたいと思っております。

参考文献:
植田和弘ほか「国民のためのエネルギー原論」日経新聞出版社 2011年
大島堅一「原発のコスト」岩波新書 2011年
ウルリッヒ・ベックほか「リスク化する日本社会」岩波書店 2011年
加藤尚武「災害論」世界思想社 2011年