JOCA連載コラム vol.14

コットンが紡ぐ素敵なプロジェクト
JOCA顧問  作吉 むつ美

東北グランマのXmasオーナメント
「あ、あれ!今年5月にいった海岸だ!」
震災時の津波で、数軒の家々が跡形もなく消滅していた海岸だ。残っていた建物も無残な
姿だった。目の前にあるのに、まるで虚構の世界にまぎれているのかと思うような造形のも
のばかりだった。出かける前、どれだけTVで映像をみても、どこか作った風景のような気が
していた。そう思いたいからだったのかもしれない。でも、目の前にあっても、ほんとうにそこ
にあるのに、実感を通り越して、ただただ、目を点にしていた。

その衝撃も薄らいでしまっていた先日、NHKで“東北グランマのXmasオーナメント”の企画
を紹介していた。オーナメントの作り手たちが徐々に力を取り戻し、一人は海にもどっていく。
JOCAの総会時の講演で、久米繊維工業の久米信行さんが「とにかく、自分ができると思った
ことを始めること、動くこと」が大事だと言われていた。なるほど、と思ったけれど、身近に見本
がある。アバンティの渡邊智恵子さん(JOCA副理事長)は、すぐに行動に結びつける方だ。
この東北オーナメントの話を熱心に話されたとき、渡邊さん、すごいよ、すぐに動いているな、
などと思っていた。でも正直いうと、その企画にあまり興味をいだけなかったので、特にそれ
以上の関わりはもとうとしなかった。

「あの針仕事がなかったら、もう一度海の仕事にむかおうとはしなかっただろう」
この言葉は、私を打ちのめしてくれた。
http://www.avantijapan.co.jp/xmas/xmas2011.html

東北コットンプロジェクト
200%、やる気がなかった。もう農業をやれないと思っていたけど、このおかげで力が少し
ずつ沸いてきた」「家も、農作業用の機械も何もかもない、というところにきた企画。一も二
もなくとびついた」
こちらは、東北コットンプロジェクトである。震災後に、大正紡績の近藤健一さん(JOCA理事)
が、塩害に苦しむ海岸沿いの田畑で、コットンを栽培してもらおうということになったとおっしゃ
っていた。できた綿を糸にして、製品化していくんだと、様々なアイデアをお持ちのようだった。
それを聞き、コットンの栽培に気温は大丈夫か…などと心配しつつも、田畑が回復するよう、
成功を祈っていた。こちらも、TVで放送されたのを先日みたのだが、9月の台風で浸水した畑で
の収穫は、ごくわずかのようだった。しかし、アパレルほか、長いスパンでの産地支援を、業務
のなかでできると、力強い言葉で、生産者たちに次の作付への強い意志を生まれさせていた。
http://www.tohokucotton.com/

一人ひとりができることは、たいしたことはないかもしれない。1000、10,000の単位で
動かないと、大きな動きにはみえないかもしれない。けれど、動く人は、一人ひとり、なのだ。
それぞれ、どうにかこうにか、生きていく。そこにある出会い、ちょっとした支えで、前をむいて、
一歩を踏み出せる、ということもある。

師走に入り、完全に冬到来という季節になったけれど、このふたつのコットンをめぐる
プロジェクトが、暖かな熱を届けてくれた。
2012年、私も、自分ができることを始めることに、躊躇なくすすみたい。