JOCA連載コラム vol.19

「風評被害」と福島いわきの今

JOCA理事 竹内 宏規

先日、関学大KGコットンプロジェクトメンバーの一員として、福島県いわき市に行って来ました。このJOCAのH.P.にも紹介されている福島コットンプロジェクトの皆さんや支援メンバーを訪問して、その活動を記録映像に残し、DVDに落とし込んで、それぞれが自己発信される際に利用してもらおうとする、学生主体の側面支援活動です。

すでにご承知のことと思いますが、この福島コットンプロジェクトの活動目的の一つは、福島県内で放射線量が基準値以下の地域、もっと言えば明らかに低い地域であるにも関わらず、食用作物を作っても他府県では売れなかったり、価格が大幅に下がって赤字が拡がったり、といったいわゆる「風評被害」に苦しむ農業者に対し、綿の栽培、綿への転作を通じた支援をしようとするものです。

福島では今、小中学校の校舎の入口近くに線量計が設置され大きなデジタル画面で瞬間線量を表示しています。少々驚く光景ですが、その姿勢は全ての情報をオープンにして、その上であらゆる対処をしていこうという、地元の強い意志の表れであるように思います。私たちも、取材する農場の土や棉の木の線量計測を、東北大学大学院原子核物理研究室の小池先生にお願いし、正しい知識と正しい情報を得つつ、この福島コットンプロジェクトを応援しようとしています。

小池先生が、自ら支援される、三春“実生”プロジェクトの紹介をして下さいました。福島県三春町のこのプロジェクトは、国や県に先駆け、小中学生を始め未就学児童、妊婦、高校生などの希望者全員に常時線量計を持たせて結果を集計し、また全国のお寺の協力で各地の線量を計測し、まさに正しい知識と正しい情報を福島から全国に発信しようとするものです。実生とは、三春の桜守が千年先を見据え種から桜の木々を育てることに由来し、実生としての子供達を対象に、この地から種蒔となる活動を始めようとの意だそうです。

被災地は今なお、いや時間の経過と共に、農業者や漁業者のみならずあらゆる業種のあらゆる市民への、先の見えない経済的な苦しみがますます増加しているように思われます。われわれは生活者として、ともすれば「ゼロリスク」を願いがちです。しかしそれだけに固執したり、それ以外は排除する方向に動くとすれば、それはむしろ「絶対安全」思想の裏返しともいえる危険な要素を含むものになるのではないでしょうか。「絶対安全」などというまやかしや「想定外」などという言い逃れを糾明するのとともに、もう一方では一人一人が出来る限り正しい放射線の知識を持ち、被災地の今後や、社会の安全、エネルギー選択について、桜の実生を種から育てる桜守の如く、未来世代を見据えつつあらゆる場面で冷静な議論を醸成していく必要があるように思います。