About oraganic cotton
オーガニックコットン
オーガニックコットン及び製品に関して、オーガニックの定義と目的やオーガニックの価値観、基準、オーガニックコットンとはについてご案内させていただきます。
更に、綿花栽培の肥料と農薬事情、普通の綿との違いや、日本での栽培の歴史、日本のものづくり、国内の流通について、そして、いま地球で起こっていること、SDGs、コットン栽培が抱える小規模農家の経営問題、人権問題、遺伝子組み換え、フェアトレード等についてもご案内をご案内させていただきます。
Purpose of organic
オーガニックの目指すもの
「オーガニック」という言葉は、オーガニック農法、オーガニック食品、そして、オーガニックコットン、などのように使われています。「安全なもの」「環境に配慮した生産方法のもの」「化学合成農薬や化学合成物質をさけて生産されたもの」という理解が一般的に広がっています。そして、現在では、食品や繊維だけでなく、オーガニックレストランなどとサービス提供においても用いられています。
この「オーガニック」という言葉は、日本では「有機」と置き換えて使われています。どちらの言葉も、いろいろに解釈されたり、使われたりしますが、法的には同義です。法律上のことや認証については、「認証」の説明文をご参照ください。
有機農業とは(IFOAM―国際有機農業運動連盟―で2008年に定めた定義より)
有機農業は、土壌・自然生態系・人々の健康を持続させる農業生産システムである。
それは、地域の自然生態系の営み、生物多様性と循環に根ざすものであり、これに悪影響を及ぼす投入物の使用を避けて行われる。
オーガニック農業は、伝統と革新と科学を結び付け、自然循環と共生してその恵みを分かち合い、そして、関係するすべての生物と人間の間に公正な関係を築くと共に命(いのち)・生活(くらし)の質を高める
この定義で説明されているように、有機農業とは、ただ作物の栽培方法が農薬や化学肥料に頼らないというものではありません。人や環境すべてが健全であることを目指すものです。
生態系を保持し、持続可能な状態であるだけでなく、私たちすべてが、公正で尊重されなくてはならないという意味も含まれています。
また、化学肥料や農薬が開発される以前の農業に戻ることを提唱しているものではなく、新しい技術や知識を、伝統的な農法や土地に根ざした様々な知恵と融合させていくことも示唆しています。
オーガニックは、人や環境のすべてが健全、且つ持続可能であることを目指しています。人の在り方、環境の健全性についての形に正解はありません。生きとし生けるモノが、それぞれ多様なあり方を認め、共存できることを目指しているのがオーガニックです。オーガニックの考え方が広がれば、人にとって植物や動物などにとっても住みやすい世界になると期待して、JOCAではオーガニックコットンに纏わるすべてをサポートしています。
オーガニックの価値観は、単に食にとどまらず、様々な分野に広がっています。しかし、そのもっとも基本となるのは「農業」です。
近年、土を使わない栽培方法もいろいろと開発されていますが、原則、農産物は土壌の力を利用して育てられます。もっとも大切なことは、生物の多様性が育まれ、健全に作物が育つような環境を整えることです。その結果として、持続性の高い農業が成立するからこそオーガニックが選択され、注目されているのです。
オーガニックに取り組む農家たちが重要視している大切なことは「土づくり」です。健全な土壌を用意すれば、多少の天候不順や病気、害虫にみまわれても、作物は生産者の期待に応え、実りを届けてくれます。
一般に収穫量や糖度を追い求めると、肥料の量を増やしがちですが、往々にして土壌のバランスを崩してしまいます。土壌の健全性を失うと作物を守るために農薬に頼ることになってしまいます。土壌を豊かにし、バランスを保つためには、伝統的な知恵や技術だけでなく、近年の研究の成果や様々な技術開発が生かされています。
オーガニックを選択するということは、農業生産に従事する方々にも大きな影響があります。近年の日本では、農薬についての規制が昔より厳しくなり、見えにくくなっていますが、農薬は散布者がいちばん影響を受けやすいのです。
適切な使用方法を守れば安全であると言われますが、経年変化や使用する環境条件で、それらがどこまで安全性を立証できるかはわかりません。
もちろん、生態系への影響は、一時的な試験レベルでは現れなくても、さまざまな形で蓄積された結果、ダメージを与える可能性があります。持続可能性を考えるなら、人にとっても、環境にとっても、農薬を使わないで生産できるのが望ましいのです。多くのオーガニックの農業生産においては、農薬を使わずに作物を育てます。しかし、健全さを追求しても完璧な環境が常に整うわけではありません。天候や生産する作物の特性、品種によって、病気や害虫から作物を守り切るのが困難な場合があります。
そのようなとき、オーガニックの農業生産であっても、植物を保護するための資材=植物などの自然物の力を利用したものや長年の実績により安全性の評価、環境への害が抑えられていると確認できている農薬を、やむを得ず使用することがあります。
消費をする立場では、簡単に「安全」、「無農薬」を求めがちですが、長年の土づくりの上に成り立っているということに敬意を表し、やむを得ず農薬などを使用する状況があるということも、理解をしてほしいと思います。
土づくりと並んでもう一つオーガニックの農業生産の軸となる重要なポイントがあります。
それは、適切な種の選択をすることです。その土地や気候に合わない種を持ってくれば、どんなに環境を整えても、うまく生育しなかったり、期待していた品種の特性が出ないということがあります。
ちなみに、オーガニックでは、遺伝子組み換えやゲノム編集を良しとせず、認証においては禁止しています。種の開発には、古来から自然の変異以外に、たくさんの人の手がかかっていますが、自然には起こりえない意図的な変更はオーガニックでは認めていません。
農業生産そのものは“自然なもの” ではありません。人類は、長い年月をかけて農業技術を発展させ、多くの食糧を確保してきました。しかし、近年の環境変化への警鐘は、間違いなくこれまでの人類の歩みに猛省を促しています。
これからは、いかにして自然の循環と共生し、生物の多様性を保持しながら生産をしていくのかが重要です。そのためには、適切な種を持続可能となるよう、選択していくことが必須です。
IFOAMの有機農業の定義は、オーガニックのもたらす価値を真に追及したもので、目標ともいうべきものです。しかし、実際には生産や流通を行うために、明確な評価基準がないとわかりにくいため、生産の目安となる基準を設け、さらには、その基準どおりに生産されていることを第三者が確認し、認証するということが広がってきました。
はじめは、世界各地でオーガニックに取り組む生産者らによって、あるいは、それを利用する製造業者らとともに基準が作られました。この基準には、生産の方法についての具体的な約束事として、田畑の管理についての条件や土づくりに使える資材、ごく一部、使用が認められている植物の保護資材や農薬などについて示されています。
90年代の終わりに、通商レベルでの「オーガニック」のガイドラインが策定されたのを機に、世界各国でオーガニック基準を整備して認証活動が行われるようになりました。それぞれ、国の事情や策定までの経緯により違いがありますが、おおむね下記のような点が共通に位置づけられています。
① オーガニックの生産基準に沿った管理を約3年つづけた田畑で収穫されたものをオーガニックと表示することができる
② 土づくりから、農産物を出荷するまで、一貫してオーガニックの基準に沿って他のものと混合せずに取り扱う(トレーサビリティの担保)
③ 天然物質を中心とした土づくりで使用できる資材や生産物が収穫できなくなるなどやむを得ず使う農薬がリストとなっている
<オーガニックは一夜にしてならず>
3年以上、無農薬無化学肥料で栽培されたものを「オーガニック」とよく説明されていますが、これは正確な表現ではありません。この3年以上というのは「オーガニックの認証基準」から引用されています。しかし、認証基準は主に国や地域で作られているので、多少の違いがあることや栽培する作物の組み合わせなどで若干この期間が異なることがあります。ですが、極端な違いはないので、ここでは「約3年」と説明しておきます。
大事なことは、作物が育つ田畑の土は、一夜にして健全になるわけではないため、準備期間が必要であるということを理解することです。認証をするための生産基準としては、一定の目安が必要なため、オーガニックでの生産管理に取り組み始めてからオーガニックと名乗れるまでの期間を「約3年」としています。
You support the organic
オーガニックコットンを選ぶ意義
JOCAは、オーガニックコットン製品を手に取っていただくことで、それぞれが社会につながる一歩になると考えます。
日本でオーガニックコットンとして流通しているものは、原則、第三者に認証を受けたものとなります。生産者にとってはオーガニックで継続して生産するためには、確実なマーケットがあることが重要です。積極的なオーガニックコットン製品の利用が、生産者が安心してオーガニックに取り組むことにつながります。
オーガニックでコットンを生産することは、一般の生産方法に比べて土づくりのために使う肥料の種類や数量、農薬等の使用を抑えられます。結果的に、様々な環境への負荷が低減されることが期待できます。
また、オーガニックコットン製品には様々な取り組みがありますが、製品化する過程での薬剤等の使用を控えているものが多くみられます。私たちが消費の段階でオーガニックコットン製品を選ぶということは、一般品を選択するよりは環境への影響が多くないと考えます。
オーガニックのめざすものを追い求めていくと、より継続的な生産方法や製造方法を選択していくことになっていきます。さらには、関わる人々や地域、環境などに目がむいて、社会への関心が高まっていきます。一人ひとりが単独ではなく、様々な連鎖のなかで生かされているということに気付きます。
少しでもそうした見え方、考え方をする人が増えていけば、豊かな社会の構築につながると期待し、オーガニックコットンを手にしていただきたいと思います。
オーガニックコットンの特徴をイラスト入りでわかりやすく説明した小冊子です。
作者:本田亮(環境マンガ家)
監修:日比 暉 (前オーガニックコットン協会 理事長)
発行者:JOCA(NPO日本オーガニックコットン協会)
協力: GOTS(Global Organic Textile Standard)
サイズ:9x9cm
価格:1部50円/100部以上40円
About organic cotton
オーガニックコットンとは
コットンはとても身近な繊維ですが、日本では商業ベースではほぼ生産されておらず、農業生産について一般にはあまり話題になりません。そして、世界各地で育てられているコットンのうち、オーガニックで栽培されているのは、ほんの数パーセントです。
一般に目にするオーガニックコットンという言葉が指すものはオーガニック農法で栽培された棉からとれた繊維のことや、それを使った製品のことです。
日本で棉の栽培は、農業生産なので農林水産省の管轄となります。一方、繊維については、工業製品なので経済産業省が管轄省庁となっています。オーガニックコットンという呼称が様々である理由は、どちらも法的な位置づけが定まっていないからで、市場には、さまざまなオーガニックコットン製品が存在しているのが現状です。それを整理すると次のように大別できます。
① 原料の原綿がオーガニック認証を受けているということでオーガニックコットンと表示しているもの
② 原料から製品までそれぞれオーガニック認証を受けているもの
③ 第三者の認証はなく、栽培や加工の方法からオーガニックと称するにふさわしいと自称しているもの
消費者の立場で、これらを見分けることは難しいですが、ただ「オーガニックコットン」と説明されていたら、①から③のどれにあてはあるものなのかを意識して商品説明を聞いてみたり、下げ札やWEBに記載されている説明書きを読むことをおすすめします。
「オーガニック」という言葉は、オーガニック農法、オーガニック食品、そして、オーガニックコットン、などのように使われています。「環境に配慮した生産方法のもの」「化学合成農薬や化学合成物質をさけて生産されたもの」と理解され、現在では、食品や繊維だけでなく、オーガニックレストランなどとサービス提供においても用いられています。日本語では「有機」と置き換えて使われています。
3年以上、無農薬無化学肥料で栽培されたものを“オーガニック”とよく説明されていますが、これは正確な表現ではありません。この「3年以上」というのは、「オーガニックの認証基準」から引用されています。
しかし、認証基準は主に国や地域で作られているので、多少の違いがあることや、栽培する作物の組み合わせなどで若干、この期間が異なることがあります。ですが、極端な違いはないので、ここでは「約3年」と説明しておきます。
また、「認証基準」では、人体や環境への負荷が大きくないと評価された農薬の使用も一部で認めています。
無農薬無化学肥料で栽培されたものも多いのですが、認証されたものが、必ず無農薬無化学肥料というわけではありません。
しかし、農薬や化学肥料に頼らずに栽培されていることは確かです。
普通の綿花栽培では、かなりの量の化学肥料と農薬が使われています。
農薬は害虫駆除、雑草の管理、防カビや殺菌消毒、収穫前の落葉剤などで、国ごとに厳しい規制が設けられていますが、それでも環境や農家の人たちの健康に影響を与えます。
また過剰な化学肥料が土壌に残ると地下水の汚染、土壌微生物の消滅などにより、作物を育てる土壌の力が減少します。
オーガニックコットンを作ろうと決めた農家は、基準に定められた有機肥料などによる土壌作りを行い、禁止されている農薬の類をいっさい使わないで、転換期のオーガニック栽培を続けなければなりません。
この畑と栽培の実際が第三者認証機関の認証を受けて、初めて「オーガニックコットン」と表示して販売できる綿花が栽培できるようになるのです。
枯れ葉剤を使用していないコットン畑
枯れ葉剤を使用したコットン畑
収穫されるコットンそのものは、オーガニックコットンでも普通のコットンでも変わりはありません。
普通に栽培された綿でも、残留農薬はとても少ないので、収穫されたものから化学的なテストなどでオーガニックかどうかを判別することは不可能です。では、どうやってオーガニックコットンがオーガニックコットンか普通のコットンかを確認するのでしょうか。
国際認証の基準に従い、栽培されている綿花畑(農場)をチェックし農地管理や栽培方法を調べ、オーガニックの認証基準に沿っているかを確認します。認証を受けた後でも、毎年、専門の検査員(監査員)が農場を訪問し、継続して基準通りに管理しているのかを確認します。このような管理方法により、国際認証を取得したオーガニックコットン製品は、いつ、どこでとれたオーガニックコットンを使っているのかが分かるようになっています。
Cotton growing・Manufacturing・Distribution
日本で初めて棉栽培に成功したのは1500年前後といわれています。一時期は盛んになった棉栽培ですが、1960年代にはほとんどなくなりました。現在、日本での棉の自給率はほぼ0%です。では、なぜ日本では棉の栽培がすたれてしまったのでしょうか。
よく、棉は肥料食い、と呼ばれ、たくさんの肥料分や水を必要とする作物と言われています。しかし、せっかくたくさんの肥料を施し、手間暇かけても、棉は10aあたり数十キロの収穫しかできません。同じ面積のお米であれば、10倍以上の収穫量が見込まれます。明治時代、政府は紡績業に大きく注力したが、国産棉の繊維長は短く、紡績機は民間に払い下げられ、次々と立ち上げられた紡績会社はインドや中国から原綿を購入して紡績業を大きく発展させていきました。戦後、一時的に作付面積はふえたものの、より換金性の高い作物が選択され、棉栽培は観賞用を中心とした栽培に限られてしまうようになったのです。
海外と比較すると、日本においては、繊維産業に限らず、分業制度が古くから地域に根付き、共生してきた歴史があります。それは昨今の国際認証の観点からすれば異なる点もあります。しかし、決して否定することではなく、更には北海道から沖縄まで、各産地にはそれぞれの特徴ある繊維加工技術がいまだに残っています。個性豊かなその技術は世界に誇れますが、残念なことにその技術の継承も危ぶまれています。
日本の産地を一つの日本工房として、Made in Japanのオーガニックコットン製品を世界に発信して行くことが必要です。日本でしか出来ないことは何か、JOCAがそれを極めていくのもこれからの未来へつなぐミッションです。
オーガニックコットン製品は、綿から紡績メーカー、生地テキスタイルメーカー、縫製工場から店舗までの流通経路にも普通の綿と混ざらないように工夫及び管理をされています。
近年オーガニックコットン製品の流通量が大きく増えておりますが、普及だけでなく、オーガニックコットンを通じた公正な概念や考え方を啓発していくことで、地球環境への負荷を減らしてゆくとともに、国内の繊維産業を活性化させて「技術力のある、元気な日本」を応援していきます。
Concerns
人口の爆発、構造的不平等とそれによる貧困、飢餓。信仰による差別や性差別。児童労働などの搾取。気候危 機、資源の枯渇、廃棄物での土地利用。生物多様性の喪失とパンデミック。 これらのグローバルな課題は繊維産業とも大きく結びついています。
繊維産業は環境負荷の非常に大きい産業で繊維原料から衣類などの最終製品に加工されるまでに大量の化学物質、エネルギー、水が使われ大気汚 染や水質汚染の原因となっています。結果、石油に続く最大の環境汚染産業となってしまっています。
また、社会的なインパクトも強く、世界では6~7千万人が繊維工場で従業していると言われ、児童労働や低賃金、差別や危険な労働環境など人権を侵害する様な環境で従業していることも珍しくありません。持続可能な社会の構築には環境の保全だけでなく、社会的規範の遵守と責任、文化の尊重と発展、経済的な持続可能性という包括的な視点が必要です。
オーガニックは単に「農薬を使わない農業」という考えではなく、包括的なアプローチで持続可能性を実現するシステムであり、オーガニックテキスタイルは、全てのバリューチェーンにおいて持続可能なバランスを保つシステムを構築することが重要なのです。
SDGsに2015年に国連で採択されたアジェンダ2030(序論)
貧困撲滅は、現在世界が直面している最大の地球規模課題であり、持続可能な開発にとって必須の条件である。
貧困撲滅、持続可能でない生産消費形態の変更および持続可能な生産消費形態の促進、ならびに 経済・社会開発の基礎となる天然資源の保護と管理は、持続可能な開発の総体的目標であり、不可欠な条件である。
地球とその生態系は我々の故郷である。「母なる地球」は多くの国や地域で共通の表現であり、持続可能な開発の推進との関連で、自然の権利を認識する国もあることに我々は留意する。
現在および未来の世代における経済的、社会的、環境的ニーズの正しいバランスを達成するためには、自然との調和の推進が必要であると認めている。
日本でも近年、コットン栽培の輪は広がりをみせていますが、産業としての成立にはほど遠いのが現状です。
実際、コットンは、世界を見渡せば80ケ国で行われていると言われています。主要な産地は、インド、中国、米国、ブラジル、パキスタン、オーストラリア、トルコ、ウズベキスタンです。これらの国で9割ほどの生産量がありますが、生産現場には難しい問題が横たわっています。
インドやパキスタンなどの産地では、比較的小規模経営の家族農家が多く、その一部では児童労働に頼る場面や低収入による厳しい生活を余儀なくされるという現状があります。
コットンは、自然な状態であれば、順番に開花し、実をつけます。そのため、次々とはじけるコットンボールを順に収穫していくには手間と時間がかかります。だからといって、同じ面積・同じ期間で栽培できる他の作物と比べて、高い収入が得られるわけではありません。できるだけ多くの綿をとるために、肥料を多く投入すれば、肥料代がかかります。
また、肥料を使いすぎれば、土壌のバランスが崩れ、病気や害虫による被害が広がり、農薬を多用しなくてはならないという悪循環が生まれやすいのです。収穫量が増えても出費が増えるため、実際の収入向上にはつながらない、安全対策が不十分な状態での農薬散布により生産者自身の健康を損なう恐れもあります。
綿花は、栽培にかなりの手間がかかります。米国やオーストラリアなどでは大型機械を利用して生産、近年はトルコなどでも機械を使っての生産にシフトしてきていますが、まだまだ、人手による栽培、収穫に頼っている地域も多いのが現状です。
こうした地域では児童労働問題が深刻となっています。綿花栽培の盛んな地域は、貧しいところが多く、子供たちが学校に行かずに就労するところも多く、未だに大きな問題となっています。
CODEXでは、オーガニック生産のガイドラインを定めていますが、児童労働の禁止はうたわれていません。また、日本の有機JAS規格でも、労働問題などは言及していません。オーガニックは児童労働などを排除していると期待されることがありますが、すべてのオーガニック基準の共通事項でないことはここに明記いたします。しかし、現在はオーガニックの基準にも、労働にたずさわる人たちの人権を保護する事項を加える、あるいは加えるべきという動きが加速しています。
オーガニック綿花栽培のトップ生産国であるインドの基準(NPOP)では、児童労働の禁止がうたわれています。また、近年は、オーガニックとともに、フェアトレードが注目されています。(フェアトレードの多くは、人権に配慮した基準を用いています)。
オーガニックコットン製品の生産販売に取り組む企業の多くは、産地の育成や人権保護への意識が高い傾向となっています。
また、コットンの栽培には、様々な人権に関わる問題が発生しています。アメリカ南部で黒人奴隷を酷使したプランテーションは、古い時代の話と思われがちですが、21世紀になっても、深刻な状況は無くなっていません。
特に綿摘みは人手が必要なので、児童労働や強制労働の問題は、繰り返し報告されてきています。様々な問題が絡み合っていますが、根幹部分はひとつで、コットンが安い単価で売買されているからです。
例えば、インドでは、530kg/haの綿が平均的な収穫量だという数字があげられています。コットンの相場は右肩上がりといいますが、平均単価の例でみると、2021年秋で2.78ドル/kgです。製造過程での減量など他の要素を踏まえずに、この数字だけで計算しても(1ドル115円計算)1haの栽培でおおむね4~6ケ月かけ、17万円程度となります。1haのコットンボールを摘み取るために、どれだけの人が必要なのか、想像してみてください。
また、人権の問題は、綿の原料となる畑だけで発生しているわけではありません。よく知られた例では、アジア諸国やバングラデシュでの縫製工場での劣悪な労働環境、強制的な時間外の長時間労働に、最低賃金や残業代等の未払いがあげられます。安い価格で大量に販売されている一部には、それらの積み重ねでできあがっているものもあります。
現在では、私たちのまわりでは、一枚数百円でTシャツを購入することができますが、それは企画・生産・物流・販売に関する様々な企業努力だけでなりたっているとは考えにくいことです。人権に配慮されず、適正な給与や手当も支払われず、長時間働かされた人たちがいたからかもしれないのです。
遺伝子組み換えは、遺伝子に栽培に都合のよい要素を組み込む技術により成り立っています。コットンは、その代表的な作物ですが、2021年には、世界中のコットン生産の約80%も占めています。国産のコットンの利用はほんのわずかである日本です。特にその成り立ちを意識しなければ、手にするほとんどの綿製品は、遺伝子組み換えのコットンだと考えてよいでしょう。
遺伝子組み換えコットンは、大別してBtコットンとHtコットン、そしてその組み合わせのハイブリッドがあります。コットン農家は、コットンワームとよばれるコットンの種につく害虫に悩まされますが、このBtコットンの種を使えば、あらかじめ遺伝子に組み込まれたバチルスチューリンゲンシス(細菌)が、殺虫成分をもつ結晶を形成することで、害虫による被害を抑えることができる、というものです。
農薬を散布しないのですから、農家にとっては良いことではないか、環境にとっても優しいのではないかと思われがちです。しかし、そもそも、通常の交配では起こりえない、菌を組み込むことについての安全性については、まだ評価が定まっていません。
もうひとつのHtコットンについては、除草剤耐性の遺伝子を組み込むことで、特定の除草剤を使っても、棉が枯れないという利点があります。雑草の管理は、農業生産の大きなテーマですから、棉を枯らすことなく除草剤を散布できるのは魅力があるものだと思われます。しかし、この除草剤に耐性をつけた雑草が増えたという報告があります。そうなると、また耐性をつけた雑草を抑えるものを作る、というイタチごっことなります。また、この除草剤を販売している会社は、遺伝子組み換えの種を販売している会社で、種と除草剤はセットなのです。
フェアトレードとは、公平なる貿易ということで特に途上国での生産と先進国での販売をつなげる役割として、1960 年代頃から生まれたものです。コットンだけでなく、食品や花、手工芸品などに広がっています。認証制度としては、FLO(国際フェアトレードラベル機構)が発展しており、検査認証制度を整え、ラベルを通じて消費者にフェアトレードの啓蒙普及をはかっています。
フェアトレードプラスオーガニックの認証をもっているサプライヤーも多くみられます。そのほか、EFTA(ヨーロッパフェアトレード協会)、WFTO(世界フェアトレード連盟)、IFAT(国際フェアトレード協会)などの活動があります。