日本オーガニックコットン協会は、人と地球を守る活動をしています。
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JOCA連載コラム vol.27

Textile Exchange マーケット・レポートより
(拾い読み(第1部))

JOCA理事長 森 和彦

今年もテキスタイル・エクスチェンジの2012オーガニックコットン・マーケット・レポートがリリースされました。前年は一般公開されていましたが、今年はまたTEの会員のみになったようです。ダイジェストとまでは行きませんが、拾い読みに解説と少し書き足しをしてみます。
2回に分けて掲載します。

◆ラリー・ペパーさんの序文では、こんなことが書かれていました。
プーマとC&Aがオーガニックコットンの有益性について説明するため、しっかりした信頼できるデータを提供しようとリサーチを実施しました。このリサーチとその他のリサーチも含め、オーガニックコットンが環境だけでなく、経済的にも社会的にもゴールド・スタンダードであることを示しました。

C&Aはウォーター・フットプリント・ネットワークと組んで、コットンのウォーター・フットプリントの調査を実施、いわゆる「グレー・ウォーター」(処理して再利用できる軽度な汚れの廃水、ブラック・ウォーターは下水)では、コンベンショナル・コットン栽培はオーガニックに比べ5倍も多いことが分かりました。化学肥料と農薬その他を含む農業排水のことですね。製品の製造加工でも調べたら相当の差が出ると思います。
プーマはライフサイクル・アナリシス(LCA)の専門家PEインターナショナルと組んで、インドのオーガニックコットン栽培のライフサイクル・インベントリー(LCI)分析を実施中、データは今後みんなで使えるはず、と言っています。こうご期待!
(注:ライフサイクル・インベントリー分析とは、決ったシステム境界内の製品のライフサイクルで エネルギーや材料などがどれだけ投入され、また排気ガスや廃棄物がどれだけ放出 されたかを分析すること。)

C&Aは前年比78%の増加、翌年は20社がこのレベルの貢献をするはずとあります。大きく伸びる会社が全体の使用量を引き上げ、戦略的に成功しているが、中途半端な取り組みの会社は減っている、と言うことですかね。

また新しいコットン生産システムが、産地の環境やコミュニティーを考慮するようになったことを歓迎、そしてリサイクルや再生可能な繊維は市場の多様性と強化に役立つので、拡大を歓迎、もうコットンだけではない、とあります。この辺りは皆さんの考え方がいろいろ分かれそうですね。

多様な「モア・サステイナブル繊維」を使うことが、新しいビジネスモデルを考えることに繋がり、長期的な「プリファード・ファイバー戦略」を作る。その戦略が会社に、その繊維の定義や最終ゴール、基準や認証への人々の感覚調査、サプライチェーンの特長付け、消費者に有益性を伝えることなどをプッシュすることになるはず。
このような多様な繊維の選択拡大は難しさもあるが、一方で社会的、経済的(生産者の家計)、環境的にポジティブな変化をもたらし、より持続可能なテキスタイルの世界をもたらすでしょう。

今回のマーケット・レポートには小売店が農家と協働するケース・スタディーやブランドが消費者と約束をする例などが含まれています。こう言ったポジティブな相互乗り入れをご覧にいれ、皆さんで情報共有をして行きたいと思います。最後にLa Rhea Pepperサイン、写真もまだパワフルです。

◆ここからは本文、まず市場の概略です。
オーガニックコットンのみの小売市場規模は89億ドル、日本円で約89百億円。これにその他の「モア・サステイナブル繊維」を含めたトータルの小売市場は成長著しいパワーになる。ただその「プリファード・ファイバー領域」の中でのオーガニックコットンの位置付けは、良い結果とランキングを維持している。
「モア・サステイナブル」と「プリファード」の定義として:
どんなものでも何かしらのインパクト(影響や負荷)があり、その意味ではまったくのサステイナブル(持続可能な)繊維や素材、市場はない。(比較し、折り合いを着けた結果の問題)
「プリファード」は、インパクトと組織としての優先度を考慮する中で、エコロジカリー(生態学的)と社会的に前向きな選択肢のより良いものをチョイスすると言う意味。
「モア・サステイナブル」は上記と似たメッセージを伝える言葉、この繊維あるいは素材、製品は、その他のいろいろな選択肢の中で比較して選ばれたものです、のように。

◆このレポートには基準の更新も含まれています。
例えばOEスタンダードはオーガニック・コンテント・スタンダード(Organic Content Standard, OCS)に替わり、これはコンテント・クレイムの基準(…が含まれていますという主張を裏付ける)であり、繊維の量とサステイナビリティーの資格証明の意味を持つシステムを説明しています。次回に各基準の詳細を表にします。

◆グローバル・トレンド
●科学者が警告する洪水やハリケーン、干ばつはもう当たり前の現象になりそう。
●工場火災、ビルの崩壊、政情不安、社会的混乱、などの人災がテキスタイルやアパレルそしてその他のビジネスに大きく影響、コミュニティーの荒廃を招いている。
●ブランドと製造工程の統合は続いていて、結果として少ないプレイヤーになり、より強力になるということ。
●ニヤ・ショアリング(Near shoring)の考え方が、繊維やテキスタイルがどこで栽培され製造されたかに影響を与えている。(従来のOff shoring、遠い国で作らせる、の逆のコンセプト)
●人口増加と所得配分の変化は機会にもなるが心配ごとにもなる。

こう言った諸問題の中、「モア・サステイナブル」繊維の選択肢は勢いを得ている。オーガニックコットンの生産量は、昨年ドラスティックに減少した後、今年は8%ダウンと足元の維持はしています。

その他の「モア・サステイナブル」コットンの選択肢は成長を続けています。フェアトレード、コットン・コネクトのリール・コットン・イニシアチブ、バイエルのE3プログラム、ベター・コットン・イニシアチブ(BCI)、コットン・メイドイン・アフリカ(CmiA)など。リサイクルや再生可能繊維の使用も伸びています。(また新顔が増えた!)

◆テキスタイル・エクスチェンジの新しい役割

オーガニック・エクスチェンジの創業メンバーは、オーガニックコットン・マーケットを築くためのツールの開発と集まるための場所を作る必要を感じていました。その結果TEはテキスタイルのサステイナビリティーの世界でユニークなポジションを得ています。我々のオーガニックコットンでの経験が、より広い市場で役に立つ基礎を作りました。TEは実際にメンバーと事業者に、自覚を持ち、知識を分けあい、サステイナビリティーの資格証明を得て、市場にむかって環境的に「プリファード」な繊維製品を届けるために必要な資源を提供します。

今日のテキスタイル・エクスチェンジは
●会合を開き、情報提供し、会員に基礎を置き産業をまたぐ可能性を作り上げる
●製品と産業のインテグリティー(間違いないこと)の提唱
●向上のためのポジティブな革新をもたらす支援
●オーガニック農家が見えるようにし、安定した市場へのアクセスを改善、ビジネス機能の開発
●サステイナビリティーを戦略にすること、グローバルなテキスタイル産業にまたがるアクションを加速させるパートナーシップを作る。

経営者用の概要書
二つのトップ・テン・リスト、C&Aが両方ともトップ
販売量のトップ・テンにC&Aが2年間2位のあとトップに返り咲きました。我々はC&Aが製品への投資だけでなく、農民の訓練と教育の支援のための農場ゲートへの投資も続けていることを称賛します。
(以下に表を掲載)
成長率のトップ・テンでもC&Aがトップで前年比78%の増加。これは今回が初めての試み。オーガニックコットンを優先して使うのを増やした企業が分かるように作りました。(表は割愛)
販売量のトップ・テン・リストに入るには,年間2百万ポンド、約900トンのオーガニックコットンを使うことになります。これは初めてのことで驚きでした。

森の感想:
色を付けたのが継続して使っている会社。ベストスリーはC&A、H&M、Nikeで変わらない。Zaraがんばれ! ウォルマート/サムスクラブが消え、アディダス、ディズニーも消えたみたい。BCIに行ったのかな?
C&AとH&Mはヨーロッパ生まれのグローバル・ファスト・ファッション、仲良くトップを競う。スポーツのナイキ、プーマとアディダスは方向が分かれたみたい。ウォルマートにカルフールとターゲット・ストアが対抗している。