日本オーガニックコットン協会は、人と地球を守る活動をしています。
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JOCA連載コラム vol.4

豊かな四季を彩りに

JOCA 理事 幕内 宣文

日本の四季は豊かで変化に富み四季それぞれに景色が変わります
春になると花が咲き緑が萠え秋には紅葉の赤黄葉の黄色と美しく変化します
自分の着る衣料をこの美しい色にしようとするのはごく当然なことでしょう。。。

天然の染料
JOCAの認証基準では使用可能な染料が天然染料または銅クロムを含まない染料となっていますので天然染料について考えて見ます。
染色では染料や顔料で色がつけられますが、古くから植物、動物、鉱物が使われました。 今はごく一部を除いて合成品ですが、染料が合成されたのは1856年に18歳の若い科学者の卵ウィリアム・パーキンがモーブという黄色い染料を合成したのが最初です。 まだ1世紀半しか経ってなく長い人類の歴史のなかではごく最近の出来事です。
今ではほとんどすべてが合成品となっていて天然のものは一部のこだわりのある工芸品や趣味の染色に使われるだけとなっています。

植物染料
草花の色は葉緑素の緑、花を彩るアントシヤニンの赤や青それにタンニン等の茶色や黄色からなっています。 葉緑素やアントシヤニンは分解しやすく染料としては役に立ちません。 植物を使って染色しようとすると薄い黄褐色になりますがタンニンだけが残るためです。 植物にはタンニンを含むものが多く黄系、褐色系の植物染料がたくさんあります。
木綿はほかの天然繊維の絹、羊毛に較べて天然染料では染まり難い繊維です。 さらに繊維の特質としてよく洗濯される用途に使われるので堅牢度が要求されよけい厳しくなります。これに対し絹は染まりやすいこと、一度染めた後はあまり水洗いされないこともあり古くから植物染料が使われてきました。

媒染
天然染料で染色する場合「媒染」という染料を固着させる過程を経ないとすぐ色落ちし実用にならない場合がほとんどです。 媒染剤によって色が変わりますが趣味の染色では変化を利用して楽しむなど考えようです。 藍は媒染剤でなく還元作用を利用した染色が行われます。
天然染料は有効成分が都度違ってくることはご理解いただけるとおもいますが、これが工業的に植物染料を使う場合の問題点の一つです。 処方を決めての染色で必要な色をだすのでなく、色を見ながら重ね染めをするなど工芸品的な手法で使われるのもこの理由によるものです。
媒染で特に気をつけないといけないことは媒染剤のなかには銅、クロムなどの有害な重金属を含むものがあることです。気をつけましょう。JOCAの認証基準では銅、クロムなど含まない媒染剤のみが使用可能となっています。

カチオン化剤
カチオン化処理剤という染色前に綿の分子にカチオン基を付ける加工剤が売られています。これを使うと染めるのが難しかった植物染料が媒染剤なしでよく染まり、色も大変濃くなります。便利に使いたいところですが、実は有害の可能性が大変高く絶対使ってはいけません。このカチオン基は第4級アンモニューム塩という大変生理作用の高いものです。
JOCAの認証基準でも禁止項目となっています。

薬にもなる草木染料
数多くの植物染料が入手可能ですがその大部分が薬としても使われています。 染色成分の多くは生理作用がありこの点は気をつけておかねばなりません。 天然のものがすべて無害とはいえません。 毒にも薬にもなります。GOTSの新基準V.3では天然染料も合成染料同様有害性の検証が必要になるそうです。

天然藍と合成藍
古くからブルーに染めるために藍草が使われてきました ジャパンブルーの名で有名です。
実は藍は複数の植物からとることができます 印度など広い範囲で印度藍(コマツナギ科)、四国は蓼藍(タデ科)、欧州ではウォード(アブラナ科)、沖縄は琉球藍(キツネノアゴ科)など別の種類の植物がつかわれているのは驚きです。これらの植物からとられた藍はいずれも化学構造が同じインディゴです。 1880年ドイツ人のバイヤーがインディゴの合成に成功し、1883年その化学構造を確定した結果、今ではほとんどすべてが合成品になっていて化学構造上もまったく同じものです。今でも一部のこだわりのある人はあえて高価な天然品を工房で使っているようです
合成品は含有率が一定であるため工場生産には便利ですが、天然品は染料の含有率が都度変動するため色を見ながらの調整が不可欠になります。

藍で染色する
藍草は収穫後乾燥、醗酵によって葉に含まれているインデカンがインディゴに変化します。 この黒い粒状のものがスクモでスクモをつき固めたものが藍玉です。
スクモは木灰、石灰、ふすまと共に醗酵させるとインディゴが還元されて水溶性となりよく染るようになります。この還元により水溶性で可染にすることを「建てる」といいます。甕の中に仕込んで作業が行われます、当然気温により醗酵還元が左右され場合よっては火で暖めたりもしますが、微妙な作業になります。うまく「建てる」が染めの品質に大きく影響します。「紺屋の明後日」という言葉をお聞きの方も多いとおもいますが、明日はうまく建つことを期待して納期をあさってと約束しても、うまく建たず納期が守れない。天然醗酵のしわざで仕方ないことですが、納期不在で関係者の皆さんさぞ困ったことでしょうね。
工業的には合成藍(インディゴ)は合成還元剤で簡単に「建てる」ことができます。
「天然藍」「醗酵建」にこだわって生産される方がおられますが大変難しい作業です。
藍は木綿、絹などによく染まります。染色した後絞ってから空気に当てると還元されて暗赤紫色だった染料が酸化され青色が現れます。1回の染色ではあまり濃色になりませんので数回繰返し望む色にします。
インディゴは鉄媒染と併用して泥染めにするなどの応用例もあります。

植物染料はすべて安全か
インターネットで”植物染料”などで検索すると数多くの植物染料が出てきます。
植物染料の多くが生薬として使われています。 「毒にも薬にも」の言葉がありますね。
媒染剤を含めて有害性には気をつけましょう。