JOCA連載コラム vol.7

綿花栽培に農薬は
どれほど使われているのか?

JOCA理事長 日比 暉

綿花栽培は、農薬多消費型の農業です。しかし、綿花栽培について、農薬使用の調査は
あまり行われないので、古いデータが使われてきました。

最近、ICAC(国際綿花諮問委員会)が、綿花栽培の農薬使用の調査(注1)を行いました。

調査結果の概要は、次の通りです。ご注意いただきたいことは、農薬(pesticides)と
殺虫剤(insecticides)を区分けすることです。注2、注3をご参照ください。

世界の綿花栽培に使われる農薬・殺虫剤

『1990年代には、綿花栽培の化学薬品使用はピークとなり、年間の綿花生産の殺虫剤使用は、
世界中の殺虫剤使用量の20数%となった。しかし、英国の民間会社 Cropnosis社によると、世界中の農薬(注2) 消費金額は、1988年の11%から2008年の6.8%(30億米ドル)に減少した。同様に、殺虫剤(注3) の使用も2000年の19%から2008年の15.7%に減少した。』(注4)

このように綿花栽培の現場では、農薬の使用を減らす努力をしています。環境や働く人たちに対する農薬の悪影響が見直されてきた証拠です。

なお、世界中の綿花栽培面積は、全耕作地の2.5%を占めているにすぎませんので、15.7%を占める殺虫剤は無論のこと、農薬全体でも6.8%を占めているということは、他の農作物に比べるとやはり沢山使っていることが分かります。

主要綿花生産国の農薬使用状況

主要国で、綿花栽培に使われる農薬は次表の通り国により大きな差があります。
オーストラリアでは、農薬使用量は、1999年にピークに達したあと、着実に減少を続けています。ブラジルでは、調査期間の年度を通じて、農薬使用は増加し、2006年には他の国の4~8倍に達しました。
これらの国々では、殺虫剤は、農薬の中で最も大きなウエイトを占めています。(この調査では、除草剤が調査対象から外されていますので、注意してください。)

*使用量kg a.i./ha はヘクタール当たりに使用された農薬の有効成分量(active ingredient、キログラム)を表す。

綿花と他の作物の農薬使用の比較

綿花と他の作物との農薬使用の状況は、国によって異なります。
ブラジルでは、2003年の農薬の販売総額は、3,136百万ドルで、農薬消費額の大きいものから、大豆(45%)、綿花(10%)、砂糖きび(8%)、コーン(8%)となっています。(注5)
殺虫剤は、農薬販売額の約23%を占め、綿花は他の作物に比べて最も多く殺虫剤を使いました。3年の調査(1994年、2000年、2006年)を通じて、綿花の殺虫剤の使用は増え続けました。
一方、米国では、2003年の農薬総販売額は7,123百万ドルに上り、そのうち綿花は8%を占め、トウモロコシの23%、大豆の19%についで第3位でした。Croplife Foundationによると、2008年には、綿花の殺虫剤販売額は、総売り上げの10%を占め、トウモロコシの13%に次いで、第2の位置を占めました。(注6)
世界全体で見ますと、2004年から2007年まで、綿花に使われた農薬の販売額は、総売り上げの約8%を占め、果物・野菜、穀物類、大豆、トウモロコシに次ぎ、米と肩を並べています。(注7)

(注1)  2006年、ICAC (International Cotton Advisory Committee、国際綿花諮問委員会、綿花関係国政府間の組織、日本政府も加盟)は、専門家委員会SEEP(The Expert Panel on Social, Environmental and Economic Performance of Cotton Production)を設け、農薬使用を含め、綿花生産の社会環境経済に及ぼす影響について科学的研究調査を行い、2009年にその結果を発表しました。
http://www.icac.org/seep/documents/reports/2010_interpretative_summary.pdf
http://www.icac.org/seep/documents/reports/2010_alterra_report.pdf
(注2)  農薬(pesticides)は、除草剤、殺虫剤、殺菌剤、落葉剤、成長促進剤、成長抑制剤などの化学薬品の総称。
(注3)  殺虫剤(insecticides)は、害虫駆除の化学薬品で、農薬の一部。
(注4) 出所:International Cotton Advisory Committee (ICAC、国際綿花諮問委員会):”Study on: Pesticide use in cotton in Australia, Brazil, India and the USA”
(注5) 出所:Sindacato Nacional da Industria de Produtos para a defesa Agricola SINDAG
(注6) 2003年のブラジルと米国の記述は、Agrow Reportによる。
2008年のCroplife Foundationのデータ:
http://www.croplifefoundation.org./cpri_benefits_insecticides.htm
(注7)  出所:Cropnosis Limited
(注8) 原文では、Cereals (麦類、米、トウモロコシなどの穀類の総称)だが、トウモロコシと米が独立項目になっているので、それ以外の穀類(主として、麦類)と考えられる。